小学生たちが施設に見学にやってきて、
その説明をわたしがすることになった。
この群れの中には、将来わたしたちのように
研究者になる子もいれば、水棲生物保護に
お金を出すような子もいるかもしれない。
そう思うと自然に力が入る。
「はい、これはオオサンショウウオ。
生きた化石と呼ばれるくらいで、
四百万年も変わらずに生き続けているんですよ」
うわー。すっげぇ!
そこかしこからあがる声。幼い顔が知的に輝くのは、
この子たちと同じくらい魅力的だ。
と、柵のそばにいる二人が真剣な顔で
なにかつぶやきはじめ、思わず耳をそばだてる。
「そうだ……おれを殺せ」
「何を言う、一緒に生きていこうと言ったじゃないか」
その視線の先には一匹を踏みつけるもう一匹のサンショウウオ。
どうやらそれにセリフをかぶせているらしい。
「だが、もう疲れたよ。
死んでいないだけのただ生きるためだけの生。
おれたちはなんのために生きつづけてきたというんだ」
「しっかりしろ! 周りが死に絶えたあの惨劇を、
おれたちが語り継がなきゃいけない」
熱いやりとりとは裏腹に、
いつものようにのっぺりした顔でふわふわ歩く黒い姿。
「しかし、長い年月の間に記憶も薄れた。
環境もすっかり変わってしまったよ。……四百万年は長すぎた」
「ちょっとまって」
わたしは思わず口をはさみ、背をそらすように二人が見上げた。
「さすがに一匹がそんなに長生きするのは、無理」