0588
2006-06-23
習い性
 彼女を、殺した。本当はそんなことしたくなかったけど、
おれを捨てて他のくだらない男とつきあうなんて許せなかった。
 公衆電話から呼び出し、見られないように
彼女を車に載せて死体を始末したあと
すぐ別の場所で他人に見られておいた。
これでおれが関わったとはだれにもわからないはずだ。

 だが、彼女の死体が見つかってすぐ、家に警察が訪ねてきた。
 どうせ形だけの訪問だと思ったら……
一枚のメモの写真を見せられた。
 日付、時間、おれの名前、話の内容、待ち合わせ場所。
そんなのが走り書きながらもきっちりとしたためられている。
「これ、は?」
 愕然としながらつぶやくと、
「あのかた、かかってきた電話ごとに
きっちりとメモしていたんですよ」
 その公務員は言った。
「はは」
 思わず力が抜けて、玄関に膝をつく。
「さすがコールセンター勤務、か」