「なんなの、まったく」
電話を切った隣の同僚が息も荒くヘッドセットを外した。
「どうしたの?」
わたしが訊くと、
「買って一か月も経ってないのに動きが悪い、壊れそうだ。
どうしてくれるんだって」
「どうなったの?」
「それがね」
深くため息をついて。
「なにやってもよくならないくてどうしようかと思ってたら、
どうやら野ざらしで置いてたみたいで」
「ええ?」
「そりゃ安い部品使ってるし、壊れやすいけどさ、
曲がりなりにも精密機器だよ? あんた自分の時計を
一か月も外に置いておいて、
それで普通の使用だって言えるわけ?」
「うわぁ、またひどいのにあたったね」
「うん。いくらなんでもいいかげんすぎるよ。
もうすこし管理しっかりした上で、電話かけてきてよ」
「でもいいかげんだからこそ、うちの製品買ったりしてね」
こぼれた言葉に、思わず二人で目を合わせ……
微妙な顔でお互いそらした。