「見ろ、この完璧さを!」
ショールームに並んだ一台の最新車が他の車に言った。
「センチ単位での停車を可能にしたブレーキ回り。
車庫入れも迷わない自動調整システム。
スピードに応じた前車との車間距離を調整する装置。
停車時には燃費を抑え、走行時にはスムーズな
スピード変化も可能にした。それらを包む美しい流線型、
外見をうらぎる広い室内。盗難予防もにロック装置もそなえ、
まさに完璧とは自分のためにある言葉だ!」
周りの車は羨望の目を向けたが、
「でも……一つだけ不良パーツがあるんだ」
ため息まじりにこぼした。
「それは一体何だい?」
訊ねる言葉に、その車は答えた。
「運転手さ」