「あ〜、めんどくさ〜」
ペンをくわえてぶーらぶら。なんで夏休みだってのに
勉強なんてやらなきゃなんないんだろう。
休みには休む。むしろ遊ぶ。それが道理じゃない?
「ん」
そういえば。
昔々のある街で。とある靴屋は、噂では寝てる間に
妖精が作ってくれた靴を売って金持ちになったとか。
なら、わたしにだって来てくれないわけがない。
そこで宿題を前に寝入ってみることにした。
次の日。
宿題は真っ白のままだった。
その次の日。
宿題はまだ真っ白だった。
さらに次の日。
変化はいまだなし。
「おかしいな〜」
早く来てくれないと、宿題出せなくなっちゃうのに。
「なにがおかしいって?」
おかあさんが言った。
「あ、そうそう。昨日の夜、頭の所できらきら光ってたの、
あれなに?」
「きらきら!?」
うそ、もしかして、それって……!
「それ、いつの話?」
「え〜と、なんだか起きちゃったときだから、
朝方の二時過ぎくらいかなあ」
来てた! やっぱり来てたんだ!
そこでわたしは昼から寝ると、夜に起きてまた寝た。
それから次に机の前で起きたとき、
目の前には何色にも色を変える、きれいな光。
そしてその中心には、小さな人形のようなもの。
「ちょっとー」
浮かんだまま気持ちよさそうに眠る妖精をつつくと、
それは迷惑そうに目を開けた。
「なに」
「あんた、妖精なんでしょ? 宿題くらい、ぱっと片付けてよ」
「なんでおれが」
いかにもだるそうな声にすこしむっとする。
「どこかの靴屋なんて寝てる間に靴ができてたり
したっていうのに」
「そりゃ、靴屋の妖精だろ。おれに言われてもなあ」
「じゃあ、あんたは何なわけ?」
するとほとほとうんざりしたように。
「おれか? めんどくさがり屋だ」