0680
2006-07-20
睡眠剤
 最近よく見る夢。
 眠さにくたくたになりながら荒野を歩いていると、
地面にぽつんとモノがある。
 まずはバケツ。穴の開いた下のほうからは
ちょろちょろと水が漏れ続け、水面近くには洋式トイレの
タンクに使うような浮き玉がある。
これが水量によって上に行くと、地面から突き出て
水を出し続ける水道管の途中の弁を閉め、
水が止まる仕組みらしい。

「なんだこりゃ、もったいない」
 手を突っ込んで穴をふさぐと、水がたまりだした。
八割がた水が入ると浮き玉が浮かび、水が弱まる。
そしておれは……気を失った。

 また別の日。
 おれはまた眠さにくたくたになりながら、
荒野の水道の前にいた。
 水の落ちているバケツを動かそうとしたものの、
固定されて動かない。
気付けば横に別の水が入ったバケツがあったので
水を足してみたところ――いつしか、眠りについていた。

 別の日。
 あの水道の前。
 今日は蛇口をひねってみた。
 魅力的な水が勢い良く噴き出し、
おれは心地よい眠気に身を任せた。

 さらに別の日。
 例の場所に立ったおれは、バケツの穴をふさいで水を入れ、
蛇口をさらに開いた。
 バケツはなみなみと水をたたえ――こぼれ。
 そしておれがその夢から覚めることは、二度と、なかった。