0695
2006-07-26
ぎょうざ世界
「邪魔するぞ〜」
 夜、部屋で飯を食っていると、友人がやってきた。
 手にした袋の中には缶ビール。
 はりつく袋から取り出して一缶をおれの前に置くと、
皿のぎょうざを取って食う。
「なんだこりゃ。なんか薄っぺらい味だな」
「ああ。苦手なんで抜いてあるんだ」
「ふーむむ」
 また一つ。口に入れてものたりなそうな顔をした。
「こんなもん食ってうまいのか?」
「そりゃおれだって、にんにくが入ってたほうが
味に深みがあってうまいと思うさ。……でもな」
 ビールの缶の蓋をあけ。
「この世界とおんなじ」
 おれは言う。
「いろんな人間がいたほうが深みのある世の中になる。
でもくせの強い奴がいると、一日中、吐き気と胸のむかつきが
おさまらなくなるんだ」