その日。帰ってきたおやじは上機嫌だった。
「どうしたの。なんかいいことでもあったの?」
「いや〜、それがさ」
後頭部におれを映しながらネクタイをゆるめて、
「携帯落とした女の子が取ろうとして車に
はねられそうになったんだよ。それをひっぱって助けたら、
おれのこと神様だって呼ぶんだ」
「へええ。イワシの頭か」
「ばーか。チャンスの神様だぞ、おれは」
にこにことしながらスーツを脱いだ。
「チャンスの神様、だって?」
「おうよ」
……言えない……。
チャンスの神様は前髪だけ伸ばしてて、
他はつるっぱげだなんて……。