たまには毛色の違うものでも書いてみたい。
社会派小説家のおれが思いついたのは、
剣と魔法のファンタジー。
とはいえ、剣か。直刀に曲刀。
民族でもいろいろある刀は振り方も殺し方も違うらしい。
……まあ、それはよしとして。
魔法。魔法ってなんだ。だれか魔法を使える人に
インタビューするなんてわけにもいかないし。
「ふーむ」
やはりまったく知らないものを書くには限界がある。
どこかしら知ってるものをからめてみるか?
たとえば、剣じゃなくてペンだ。
人々が剣を振る代わりにペンを振るう世界。
「む?」
そうだ、これはなかなかいいかもしれない。
じゃあ、魔法は……アホウだ。魔法も使えないアホウが、
剣の代わりにペンで書く。敵を倒すペン。罵詈雑言、
誹謗中傷の類をペンに込め、紙にしたためて行くんだ。
そう! 例えば新聞やビラに、相手を貶める言葉。
ネットがあるならサイトを作り、
相手の掲示板には嫌がらせの書き込み。
「いいぞ、いいぞ!」
イメージが固まってきた!
敵も必要だが、これは政治屋なんてどうだ。
政治屋を目指して足をひっぱりあいやがる、
ペンとアホウの物語だ!
……結局現実そのままじゃないか。
おれはページを破いて丸めて、投げ捨てた。