0710
2006-07-31
絶対君主
「あーあ、こんなに散らかしちゃって」
 こどもの散らかしたおもちゃを片付けながら、
母親がつぶやいた。
「あんまり片付けないと、捨てちゃうよ? 
おもちゃたちだってどう思ってるんだろうね」
 夜。押入れの中から小さな声が響いていた。
「遊びの中で壊されるのもいい。なくされたって本望だ。
だが、大人はどうだ! こどもの大事にするものでも
自分の思い一つでいとも簡単に処分する。
それも、こどもがただこどもであるという理由からだ。
大人同士なら決してそんなことはしないのに。
そうして年に何千・何万という仲間が捨てられている! 
これを許していいものだろうか!」
 一体の人形が叫ぶとうなるような声。
「大人の横暴を許すな! こどもの夢を守れ!」
 おもちゃたちは口々に叫んだ。