たった一発の爆弾で一つの市が焼けた
悪夢のような時から何十年もが過ぎた。
今年もかつての『その日』に式典が催され、
一組のこどもが大勢の前で念入りに用意された文章を口にする。
そしてその最後、
「ぼくたち」
「わたしたちは」
「二度と戦争が起きないよう、戦争の悲惨さを語り継ぎ、
平和を守り抜いていくことを誓います」
臆することなく口にした。
「おれはもう何十年とああいう奴らを見てきたが」
先の大戦で死んだ男がつぶやく。
「やつらが実際に戦争の悲惨さを語り継いだところも、
平和を守るためになにかするところも見たことがないんだ」
その横の男は笑って応えた。
「それが、平和だってことさ」