雨には負けず、試合も中断されずに奮闘した野球が、終わった。
応援する側、される側、みんな濡れながらの戦いだった。
キャプテンはつややかな肌をワイシャツから透けさせる
マネージャーに自分の上着をはおらせ、
試合を終えた面々が戻るのを待つ。
そして雨か涙か、こぼれる雫をぬぐうことなく
集まった部員たちを前にすると言うのだった。
「今日は残念ながら負けた!
でも、一度も勝ったことのないおれたちが一勝できたし、
勝利よりもっともっと大切なものを手に入れたと思う」
大きく息を吸い、
「言葉はなくても同じことを願った時間、団結力。
それに、思い出だ!」
熱い雫を頬に伝わらせる少年たち。
うなだれながらおのおの出口へ向うところ、
応援席にいた補欠がそばに寄り、言った。
「キャプテン、おれにも思い出、焼き増ししてくださいよ」