教育実習で保育園に行った。
小さなこどもたちはみんなかわいいけれど、
とりわけかわいい女の子がいる。
「あそぼー!」
にこにこと見上げられると、
何を置いても構いたくなってしまうほど。
「ほーら、くるっと返してうさぎさーん」
手袋で簡単にうさぎ人形を作ると、
「わー、かわいいー」
中のわたしの手ごとぎゅっと頬に寄せて、キスをする。
そんなこの子のほうがずっとかわいくて、
一緒にいるとなんだかとろけてしまいそうになる。
でもなんでそんな風に思うんだろう。
おねだりがうまい? 感情表現が上手?
……そんなことじゃない気がする。
そこで質問をぶつけてみたところ、先生は笑った。
「あはは、あの子、かわいいよね」
「先生も思います? でも、なんででしょうね」
するとすこしだけさみしい顔。
「たぶん、お迎えを見ればわかると思うよ」
次の日、お迎え時はばたばたするけれど、
気をつけてあの子を追ってみた。
「おかーさん!」
短い足で一生懸命かけていき、スーツ姿の女性の元へ。
おかあさんらしい人は小さな体を抱き上げると、
「ただいま〜」
ぎゅっと抱きしめ、キスをする。それはそのまま、
どこかで見た光景。
瞬間、わたしにも理由がわかった。
愛されて愛されて。愛されることも愛することも知ってるから、
あんなにいとしくて、あいらしい。
じゃあ、知らない子は?
そう思うと、なんだかすごく、切なくなった。