火葬が済み、おじいさんのお骨の載った台が運ばれてきた。
鉄板の上にはお棺を載せたらしい硬そうな金属の枠組みがあり、
その上にも、そして下のほうにもお骨が散らばっている。
人体標本のように出てくると思っていたのだけれど、
そこにあるものは骨を思わせるだけの白いものだけで。
係の人は、まるで焼肉で金網にこびりついたお肉をはがすように、
上にあるおほねをこそげ落としていく。
もはやそれが人であったと思わせるものはひとつもなかった。
下にある骨、上にあった骨。
火に焼かれ、お棺が燃えて、おじいさんの皮膚、
筋肉が焼け落ちて支えきれなくなった頭のお骨や背骨が
下に崩れていったのだと思うと、息をするのも苦しい。
足も手も指はなく、肋骨すらも残らなく。
あるのは淡い緑に色づいた頭骨の一部と、
根幹の太いところ。それが残ったおじいちゃんのすべて。
……けれど。
「お骨、入りきれませんので、順次こちらで砕いてください」
みんなでお祈りし、お骨の箸渡しをして。
それからおのおの、お骨を直接骨壷に入れるところで、言われた。
係の人から差し出されるのはすりこぎのような棒。
ぎくりと体を硬くするわたしたちに受け取る人は
だれもいなかった。
どうするのだろうと思っていると、その人が骨壷につき、
お骨が入れられるたびに突き降ろしていく。
――ぼぞっ、ぼぞっ。
砂糖菓子を砕くような音を立てて粉々になっていくお骨。
やめてやめてやめて。そんな親の仇みたいにしなくても。
戦時中を生きたからって、闇米の脱穀みたいにしなくても。
目をそらしても聞こえる音はあくまで軽く、
心に入ればなにより重く。わたしの胸を押しつぶしていった。