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2006-08-25
魂の場所
 火葬場の控え室で呼ばれるのを待っている間、
お年を召した親戚たちは次に誰が死ぬか、という話題で
一種異様な盛り上がりを見せていた。
「順番から言ったらおれだな」
 くぐもった声のおじいさん。
「あいつにさびしい思いをさせるわけにもいかんし、
長男として早く行ってやらにゃ」
 冗談めかしてはいるけれど、冗談ではないようだった。
 それは死への怒りでもあり、悲しみでもあり、
都合も思惑もお構いなしに翻弄される
生への諦めでもあるのだろう。

「いいんですよ。父はきっと、先に行った
わたしのきょうだいたちと一緒に暮らしてますから」
 母の言葉に、亡き祖父を思う。
 親子で一緒に過ごしていて、
そこにきょうだいが来たらどうするのだろう?
 家族とそのまま一緒にいるのだろうか、
それとも一緒にいるために来たきょうだいと過ごすのだろうか。
 そっと耳打ちしてみると、
「向こうなら、きっとそんなの関係ないのよ」
 母は言い、わたしはただ、幸せであればいいなと、
祖父を想った。