強大な悪が、よみがえろうとしていた。
悪魔たちは喜びに叫び、その時を待つ。
それに対する力を持つ神は、いなかった。
かつてその悪魔との戦いで双方命を落としてしまっていたのだ。
だが神たちはその時を信じていた。
禍々しいものこぼれ出し、悪魔がその片鱗をのぞかせ始める。
神々は、なすすべもなかった。
そのとき、人の世で一人の人間が天に召された。
その日、その時、その瞬間に、彼女は自由になった。
彼女自身は神性もなくただの人として生き、
人として隠れた一生だった。
世に命が生まれ、人が生まれ、出会い、別れ、
憎みあい、愛し合い、殺し、生み、死んできた歴史。
ただ一瞬、いずれのできごとがずれても彼女は生まれず、
また、そのときに死ぬことはなかった。
彼女は死に、すべての布石は結実した。
傷つき失われた神の霊は人にとっては長い長い時間をかけ
息吹をあたえられ、浄化され、そして今、神へ戻る力を得た。
人が生き、嘆いた日々にも、神はいた。
神はいないと叫ぶ人々の中にも神は住み、
ただその時を待っていた。
悪魔にみやぶられ、その計画をさまたげられないように、
巧妙に、そして密やかに隠した魂の再生。
世界のすべては輝き、すべて肉から解き放たれた。
魂は集まり、完全な神の形へと集約していく。
すべてはただこのときのために。
すべてはただ、このときのために。