「まずい。最近太ってきた」
友人が言った。
「うん、昔から知ってる」
おれは答える。
「相変わらず容赦ないな……。なあ、夏を前に
このたるんだ体を引き締めるのにいい案はないか?」
「ほどほどに食って運動」
「それができれば苦労はない」
「ならこの飽食の時代だ。
土曜日は水と塩だけで過ごしてみるとか」
「おう、それならできそうだ!」
そして一か月後。
「どうよ、このおれの姿は」
得意げに友人が訊いた。
「変わってねえ〜! ってか、むしろ太ってないか?」
「うそだろ?」
あわてて体重計をひっぱりだし、乗ってみると。
「なんてこった。……なんでだ?
ここんところ水しか口にしてないのに」
「とりあえずどんなふうにしてるか見せてみなさい」
「え? 特に変わったことはしてないけどなぁ」
そういって用意するのはコップに水と、塩。
「まずは塩を食うだろ? んで、水を飲む」
「うん。それだけか?」
「いや。こんなもんじゃ食った気にならないし、
水だけ飲んでもつまらないだろ」
次に水を汲むと、なにか粉を大量に入れてかき混ぜる。
「ちょっとまて。それはなんだ?」
「砂糖水」