ある日の昼、家周りの掃除をしていると
向かいの公園でぐったりと座る若い男を見かけた。
見たこともない若者だが、こんな昼間に落ち込んでるのも
ろくなことではあるまい。
そこで教師だった昔を思いながら声をかけてみることにする。
「やあ、どうしたね、お若いの」
すこし離れて長いすに座って話しかけると、
「探し物が見つからないんだよ」
とくに警戒するでもない言葉が返ってきた。
「そうか……。でも、夢だって人生の目標だって、
若いうちはみんなそうさ」
青春の悩みに翻弄されているこの若者の心への語りかけに、
「違うよ!」
彼は首を振り、言った。
「職だよ、仕事だよ。働きたいのに働く場所が
どこにもないんだ!」