お昼ごはんの用意をしようと中を見回すと、
昨日買ったさばの袋。
昨日のうちに食べようと思ったのに、
忙しくってさばく時間なかったからなあ。
とりだしてにおいをかいでみると、
なんだかだめそうなにおいがする。
「ねえ、これどう思う?」
呼んだ夫も鼻を近づけ、
「あぶなそうならやめといたほうがいいよ。鯖は足がはやいから」
「うーん、しかたない。じゃあ捨てちゃうね」
と。
「なんで魚が足はやいの? 変なのー」
下からまだちいさな息子の声。
「変じゃないぞ。こう見えて魚は華麗に走るんだ。
もしかしたら負けちゃうかもよ?」
夫がからかって言うと、息子は唇を突き出して
ふてくされた顔をする。
……なんでこんなことでいちいち腐らないといけないんだろう。
すると、夫は言った。
「いや、訂正。足の早さなら魚もかなわなそうだ」