「今日のお天気は、全国的に晴れです」
出勤前に眺める画面でお天気おねえさんが笑顔を見せた。
じゃあ、傘は気にせず置いていこう。
外に出ると、青い空。今日はさわやかな一日になりそうだった。
……けれど。
「悪い! 品質の課長に連絡入れてくれないか」
会社につくなり、変にあわただしい空気。
わたしに気付いた係長が受話器の口を押さえていった。
「どうかしたんですか?」
「新製品で発煙が三件たてつづけにあったらしくて、
いま確認とってるところなんだ。頼む」
それだけ言うと、電話に出たらしい相手に
頭を下げながら話を始めた。
じゃあ、わたしも電話しなきゃ。
受話器を取り、かけようとすると別の人からかかる声。
「気をつけて。あそこの課長、
気分悪いときまともに話できないから。
第一声で判断して、不機嫌そうだったらうまく流して話すすめて」
「はい、わかりました」
音に集中しながら内線電話をかけると、
「はい?」
確実に不愉快な中年女性の声。
「始業時間前に何の用?」
隠しもしない不機嫌さがわたしの体を蝕んでいく。
……なんでうちの会社の女性責任者は
こんなのばかりなんだろう。
自分の感情で同じ仕事ができなくなるとか、
仕事より先に本人の機嫌を伺えなんて言われるとか。
それが責任者としてあるべき姿?
わたしは思わず言っていた。
「すみません。課長のところにかけたつもりだったのですが、
お天気屋さんにつながるとは思いませんでした」