0872
2006-09-14
信仰の侵攻
 海の中、住むものもなく一面緑の草に覆われた島がある。
 だが、ここが木々生い茂る豊かな場所であったことを
知るものは、もはやいない。
 かつて人々は木々をくりぬき、
組み合わせ、船を作って漁に出た。
 石をうがいて巨大な神の像を作り、
木々に乗せては遥かを運んだ。
 ――それが、いつか。
「ああ、神様!」
 人々は祈るようになっていた。
「なぜかこの島から急速に木々が失われています。
島の周りからは魚もいなくなりました。
あなたのお力でどうかお救いください」
 島のいたるところ、土地を埋め尽くすほど増えた人々は、
自分たちの繁栄のために木を切っては船を作り、神の像を作った。
 ――ただ、ひたすらに、あらそうように。