0875
2006-09-14
小さきものの声
「なんか最近ずいぶん具合悪そうだけど、だいじょうぶ?」
 すりきれそうな心で友達に電話すると、訊かれた。
「あんまりよくないみたい。
休みでも休んだ気がしないまま週明けだよ」
「仕事しすぎなんじゃないの? 毎週何時間働いてる?」
「え?」
 指折り数えて、その答え。
「今週は五十八時間くらいかなあ」
「あのさあ、それって」
 あきれたような、かなしいような声で、
「八時間勤務で一週間まるまる働いてない?」
「そ、そうだったんだ……」
 そんなことになってたなんてはじめて知った。
 そこで次の日、相変わらず具合の悪そうな上司に言うと。
「おれだって同じだけ働いてるけど、文句は何も言ってないぞ」
 答える言葉にわたしは思った。
 ――言えよ。