朝。部署の一人から、着くのが送れそうだと電話が入った。
「また遅刻だよ。社会人としての自覚がないよな」
部署の二人が言った。
ある日。遅刻で社会人の自覚が無いと言った人が、
就業時間になってもいなかった。
「また無断遅刻か。あいつは社会人の自覚がないな」
普段遅刻して、社会人の自覚がないと言われた人が言った。
「まあ、その点に関しては、そこにも仕事時間中に
仕事以外のことばかりやってるのがいるからな」
別の日。仕事時間中に仕事以外のことばかりやってると
言われた人が別の人のところから戻ってきてつぶやいた。
「何度説明すれば覚えるんだか。
仕事やってるってわかってるのか? 社会人の自覚がない」
そして席に着くと、
「まあ、目の前でぼりぼりぼりぼり食うだけの奴もいるけどな」
また別の日。後ろのほうで楽しそうに話す声を
耳にしながら仕事をしていると、
「まったく、仕事中に私語とはいいご身分だ。
社会人としての自覚が無い」
食べるだけと言われた人が憎々しげにつぶやいた。
「あっちの、お客対応もまともにできない奴といい、
社会人をどう思ってるんだか」
さらに別の日。わたしが食事から戻って
扉に手をかけようとすると、中から話し声が聞こえてきた。
「あいつはいてもいなくても同じ。ろくに仕事もできないし、
なんだかんだ言って残業もさぼろうとするし、
社会人の自覚がないよな」
わたしのことだ。
「なんなの、この部屋……」
入る気力もなくなって、しばらくその場に立っていた。