同僚に訊かれ、男は答えた。
「はあ? なんだそれ」
「ふざけるなよ。上物の酒やるから
やっといてくれって頼んだだろ」
「知るか。酒なんかいらないし、人の仕事なんかやりたくもない。
なのにおれがやるってはっきり言ったとでもいうつもりか?」
言葉を失う同僚。
「そうだろ? 相手の了解も無いのに
自分だけで頼んだつもりになって怒ってるなよ。
虫が良すぎるってもんだ」
帰り道。
駅で雑誌を買おうと財布を出した彼は、
中にある札以外の紙の存在を思い出して神社へ駆け込んだ。
「なにが神様だ、ふざけやがって!」
賽銭箱に宝くじの束を叩きつけると、声の限りに叫ぶ。
「あんなに金も入れて、当ててくれるように頼んだだろうが!」