時間さえあればたばこを吸っていた男が結婚したら
量を減らし始めた。
そしてとうとう――。
「どうした、最近吸ってるところ見ないけど、結局やめたのか?」
「べつに、やめたわけじゃないよ」
ふてくされた声。
「ははは、照れるなって。結婚してもたばこはやめないって
言ってたくせに、赤ん坊ができたら禁煙までしやがって。
いいおとうさん気取りか、このやろう」
からかうようにひじでつつくと、振り払うように逃げて。
「違うんだよ!」
声を荒げた。
「結婚して小遣い制になった上に、
今度はこどもができるからって小遣いを減らされて。
もうたばこ買う金すらもらえないんだよ!」