「お忙しいところ失礼致します。わたくし……」
電話をかけて話し始めたとたん、
「ううん、別に忙しくないけど――ちょっと待って!」
おばさん声の相手に言われた。
「はい?」
「な、なんで忙しいと思ったの? 超能力気取り?
それともうちを盗聴とか盗撮とかしてて、
それだと忙しくしてるように見えたってこと?」
「いえ、そのようなことはございません。
お忙しいところにおかけしてはいけませんと思いまして」
答えると、
「じゃあ、『お忙しいところ』って変じゃない?」
「ええ、そう思いますが上司の命令でして」
「ああ、そうなの」
ほっとした声。
「ところで、お話してもよろしいでしょうか?」
気をとりなおして言うと、
「あなたと話したら、忙しくなっちゃうからやめとく」