0946
2006-10-06
くち
 あたらしくうちの職場に来た女の子が、
仕事の内容や仕事場の環境、人間関係に少々文句をこぼした。
 おれの一存で変えられることでもなく、
慣れれば変わるだろうと思っていたら案の定。
一か月もしたころには何も言わなくなった。

 それから五か月。――彼女は、辞めていった。

「なんで辞めちまったんだろうな。仕事もずいぶん慣れてきたし、
職場の雰囲気まで明るくしてくれる、すごくいい子だったのに。
みんな口には出さなくたって頼りにしてたんだけどな」
 家に帰って女房に話すと、
冷たい笑顔を振りまきながら、言った。
「ねえ。必要ないときほどよく動くのに、
必要なときほど動かないものってなーんだ?」