0947
2006-10-06
不遜
 あたらしく買った家電製品の使い方がよくわからなかったので、
メーカーに電話をかけて訊いてみると、
「お探しの情報は、弊社ウェブページで写真つきで
くわしくごらんになれます。
インターネットをお使いいただけるのでしたら、
ぜひご覧ください」
 明るい声の若い女性に言われた。
「あら、そう? じゃあそうしてみる。アドレスは?」
「では、もうしあげます。http://wwwのあと、
エス、ユー、ビー……」
 ふむふむ。subete-onsyasamano-mikokorono-……
「って、ちょっと待って」
 手を止めるわたし。
「はい?」
「この後ろって、mamaって続く?」
「mamani、ですね」
 つまり、『すべて御社様の御心のままに』ってわけ?
「ふざけないでよ。こんな文字を打たせるなんて何考えてるの!」
 思わず言うと、
「はい? 申しわけありません。
おっしゃっている意味がわかりかねますが……」
 本当に何も感じていないような声。
「あのねえ……」
 なにをさせようとしたのか教えようと思ったけれど、所詮窓口。
すべてどう言えと命令を受けているだけなのだろう。

「いいわ。ちゃんとした回答が欲しいから、
そちらの会社のメールアドレスかなんか教えてちょうだい」
「はい、至らぬばかりで申しわけありません。
では、よろしいでしょうか」
 そして言われるスペルは、
「gudonna-watashini-okotaewo@……」
 『愚鈍なわたしにお答えを』?
「もういい!」
 怒りにまかせて思わず電話を叩きつけていた。