「はやく、死ねばいいのに……」
彼女たちは同時につぶやいた。
彼女は心臓が悪かった。いつ止まるかわからない
気まぐれな時限爆弾のようなものを抱えて生きる暮らしに
彼女の心と体は削られて行った。
一方の彼女は肝臓が悪かった。美しくもない肌の色、
いつ死ぬ皮からない恐怖に彼女は毎日を狂おしく過ごしていた。
ふたりは、ふたごだった。
『あの子の心臓が欲しい』
彼女は思った。わたしの元気な心臓をもっていかれたから
わたしはこうなんだ。
『あの子の肝臓が欲しい』
彼女は思った。わたしの別の体がそこにあるのに、
どうして使っちゃいけないの?
薬漬けで痛まないうちに。まだまだ肉のきれいな今のうちに。
「はやく、死ねばいいのに」
ふたりは同時につぶやいた。