0981
2006-10-16
脱げ! ねえちゃん
 出かける用事ついでに友達と待ち合わせて、
下着屋さんに入った。
 とりあえず気に入ったのを持って試着室に向かおうとすると、
わたしの服をつかむ手。
「ね、やめといたほうがいいよ」
 悲しい顔でわたしを見つめる。
「どうして? ここのは結構かわいいし、
サイズもそろってるから気になるところでいろいろ選べるのに。
せっかくだから試してみれば?」
「う……ん、でも」
 つらそうな顔をそらして、ストリップは嫌だから、
とつぶやいた。
「え? スリップ?」
 ききかえすと、
「このまえ、昔の彼の部屋でね」
「え? 昔? この前はじめて付き合ったって言ってなかった?」
 思わず訊くけれど。

「昔の……彼の部屋でね、いやらしい動画見たんだ。
試着室で下着つける人、何人も隠れて映してるのだった」
「え? このお店?」
 叫びそうになる声をひそめるわたしに首を振り、
「でもそれから気になっていつも見てるんだけど」
 こわばった表情でさし示す指は小さく震えているようだった。
 その指の先――

 『試着室内、カメラ録画監視中』