出かける用事ついでに友達と待ち合わせて、
下着屋さんに入った。
とりあえず気に入ったのを持って試着室に向かおうとすると、
わたしの服をつかむ手。
「ね、やめといたほうがいいよ」
悲しい顔でわたしを見つめる。
「どうして? ここのは結構かわいいし、
サイズもそろってるから気になるところでいろいろ選べるのに。
せっかくだから試してみれば?」
「う……ん、でも」
つらそうな顔をそらして、ストリップは嫌だから、
とつぶやいた。
「え? スリップ?」
ききかえすと、
「このまえ、昔の彼の部屋でね」
「え? 昔? この前はじめて付き合ったって言ってなかった?」
思わず訊くけれど。
「昔の……彼の部屋でね、いやらしい動画見たんだ。
試着室で下着つける人、何人も隠れて映してるのだった」
「え? このお店?」
叫びそうになる声をひそめるわたしに首を振り、
「でもそれから気になっていつも見てるんだけど」
こわばった表情でさし示す指は小さく震えているようだった。
その指の先――
『試着室内、カメラ録画監視中』