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2006-10-19
ばかを知りたきゃ
『ばかを知りたきゃコールセンターへ来い!』
 って本を、いつか書くよ。
 冗談交じりにそう言って笑った先輩はもういない。
 でもわたしは――
「ちょっと、聞いてるの」
 受話器の向こうで不愉快なおっさんが不愉快そうな声を出した。
「はい、伺っております」
「なんで融資できないって言われるわけ? 
なにも全部の奴らに融資してくれって言ってるわけじゃない。
おれにだけでいいんだよ」
 あのねえ。他の人にできないものをあなただけ特別に
やるってことは、不正融資だってことがわからない?
「申しわけありませんが、わたくしに決裁権はございません。
なお、こちらは当行のご案内電話となりまして、
そういったご質問にはお答えすることはいたしかねます」
 するといっそう不快な声で言う。
「そんなこと言っていいのか? 
おれはあんたらの社長と知り合いなんだぞ」
 わー、すごーい。
 銀行の電話を受けたって
コールセンターなんてたいてい雇われ。
派遣社員や委託業務員ばっかりなのに。
「おめでとうございます! 
社長とお知り合いとはうらやましい限りです」
 わたしは言った。
「では、後のご不満、ご要望は弊社社長に直接お話くださいませ」