「最近いじめで中学生が自殺するという
痛ましい事件が起こってる。
残念ながら教師が気付けないこともあるだろう。
でもわかればなんとかするから、
いじめがある、いじめを知ってるという人は先生に言って欲しい」
朝の学活で先生が言った。
ほっとした。
ほんとになんとかしてくれるなら――。
放課後、廊下で先生を呼び止めて、
受け続けた仕打ちについて話すと、
「そうか」
先生は眉を寄せると言った。
「でもな、いじめられるほうにも問題はあるんだ。
もっと心を開いてみんなに溶け込まなきゃ」
そして次の日。おれを教壇に立たせ先生は言う。
「昨日いじめがあるって言われて、先生は悲しかった。
いいか、いじめはだめだ。みんな仲良くするようにな」
ああ、よかった。本当になんとかしてくれた。
おれはすがすがしい気持ちで先生を見ながら、つぶやいたんだ。
――そんな『何とか』は いらねえよ。