0992
2006-10-20
奴隷解放
「ただいま〜」
「おかえりっ」
 疲れた顔で扉を開けるだんなさんをお出迎え。
「ごはんできてるよ」
「うん」
 彼が着替える間に用意しちゃおうと廊下を戻りかけると、
「愛してる〜」
 後ろから抱きしめてきた彼の腕が体をまさぐる。
「やっ、あっ、ちょっ、もう、なに?」
「君のエプロン姿にひかれたんだ」
 首筋に顔をつけて、手は服の中へ。
「だめ、シャワー浴びてからにしてよ。
料理してて汗かいたから〜」
 振り切ろうとするわたしをさらに強く抱きしめて。
「気にしないよ、そんなの。むしろ、それがいい」
「あーもう、変態! ごはん冷めちゃうよ。この奴隷!」
「奴隷ってなに」
 一瞬気がそれたところでわたしは脱出。
荒くなった息と乱された服を整えながら彼と向き合った。
「最近わからなくなるんだ。
本物のあなたは、もしかしてそっちじゃないの?」
 そっち。あの人の股間の生物。
「ええ? なんでさ」
「そんな小さい子が、『えっちしたいよー』、
『むらむらしたよー』、って言うと、
あなたは大きな体で『ははーっ、仰せのままに』って
見境もなく襲ってくる。ご主人様とその奴隷みたいで、
わたしそんなの好きじゃない」
「なんだよ、ひどいなあ」
 しょんぼりするその体、その胸に、わたしは頭を軽く当てた。
「最近、ちょっと興味あるんだ」
「うん?」
 頭を包む、その彼に。
「ご主人様から開放してあげたら、あなたはどうなるのかって」