「あーっと、一瞬の隙をついてはがいじめだー!」
「――――!!!」
ごうっとうなりのような歓声。
熱のこもった実況の声すらかき消すほどに、
人の叫びが空気を揺らす。
「そしてそこから――!」
プロレス会場の中心、暑いほどの光に照らされる
中心のリングで、一人を羽交い絞めにしていた男は腕をほどいた。
「これはどうしたことかぁ? 離した、
はがいじめの腕を離したぞ!?」
がんがんと打ち鳴らされる金属音。
男はそのまま一つの角に歩いて行く。
「おい! なんのつもりだ!」
マットの上、起き上がる男が憎々しげに吠えると、
歩く男は振り返り、言った。
「いじめ、粋じゃない」