彼と二人ではじめての泊りがけ旅行は、ずっと行きたかった島。
空港を出たところから見える海でさえ普段の見るものとは違う。
ほんとうに宝石を溶かしたような、うそのように青い海。
「うわー! きれい!」
思わず声を上げると、
「そうでもないよ」
彼がつぶやく。
――む。なんでそういうこと言うかなあ。
それでも気持ちを盛り上げて、彼に言葉をかけてみる。
小さな露店のような小物屋さんで、
「ね、見て。かわいい」
「まあまあだな」
道端にある食べ物屋さんでは、
「すごーい、いいにおい」
「たいしたことないな」
来たくないなら別の場所にしようって言えば良かったのに。
こうなったらこんな男は無視して
わたしだけでも楽しんでやる!
彼の意向は気にせずに、わたしが見たかった遺跡へ。
話に聞いていた石垣は聞くと見るとでは大違い。
古代人が作ったなんて思えないくらいの美しさに、
「すごい……なめらかな曲線」
心から漏れる言葉に彼が言う。
「おまえほどじゃないよ」