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2006-11-09
遊走地雷
「たとえば地雷原に踏み込んだことに気付いたとして。
一秒でも長く生き延びる方法はなんだと思う?」
 軽くいすをわたしの方に向けながら、先輩が訊いた。
「ええ? それは……動かなければいいんじゃないですか?」
「うん。だって普通の地雷は、ただそこに埋まってるだけ
だからね。でも、それが自分から走ってくるとしたら?」
「気が気じゃないですね」
「うん。何もしなくてもやってくるからたちが悪い」

 と。
「ちょっと、勤務時間中に話してないでよ」
 後ろから室長が声をかけて歩いていった。
 『別に電話中じゃないんだし、それくらいいいじゃない』。
そんな表情が先輩の顔に浮かぶ。
「でも、あと十分。電話なくて終われればいいですよね」
 わたしが言うと、
「あ、ばか」
「え?」
 ポー! 目の前の電話が鳴った。
「あ〜、あたっちゃったね」
 うう……。この時間で電話をとったら残業確定なのにぃ。
 いやいや手を伸ばす横で、先輩の声が聞こえた。
「気を抜いた瞬間、地雷が向こうからやってくる。
それがコールセンターの悲しい事実なんだなあ」