心理学概論の授業を終え。一服しようと友人と喫煙所に行くと、
「ほんっとばかだよな。なんでも性欲に結び付けるとか、
おまえの方が精神病かっつーの」
「なんであれをありがたがるのか意味わかんねえよな」
同じ授業帰りのやつらがすでにいて、精神分析学の祖について
耳障りに話しながらたばこをふかしていた。
「ああ、まったくだ」
灰皿を囲むやつらを軽く押しのけてライターに火をおこし、
「最初に火を使おうとしたやつってのもとことんばかだよな。
いちいち使おうと考えなくたってこんなに簡単に使えるのに」
たばこに移すと肺一杯に吸い込み、煙を思いっきり吐きつけた。
むせる二人。やわなたばこにやわな頭か。
多少気も晴れて、たばこを消してその場を後にすると、
「どうしたんだよ、めずらしい」
友人が追いついて訊ねる。
「おまえだっていつも嫌いだ嫌いだって言ってんじゃないか」
「ああ、確かにな。でも……」
ふとあごをさすり、考える。
「あんな風にけなされるのは、なんか許せないんだよな」