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2012-03-28
フリー・ウィリー
FREE WILLY
1993年 アメリカ
主役は孤児院のようなところで育った少年です。

母親は主役を捨てていきましたが、
主役は母親がそのうち戻ってくると信じています。
主役はほかのこどもたちとつるんで悪さをしています。
もう里親が決まっています。

ある日、悪さをしたあと警察に追われたので建物に逃げ込み、
中で落描きをしているところをつかまります。
刑を軽くするために、落描きを消すことを言われます。

建物は水族館で、水槽にはシャチがいました。
主役は夜に忍び込んだりしながら、
シャチと親しくなっていきます。
そのうちそれがばれて、
正式に水族館の手伝いをすることになります。

シャチとどんどん親しくなります。
水槽が窮屈そうなので広くしたいと思いますが、
それにはお金がかかることを知ります。
稼ぐにはシャチに芸をさせるのが手っ取り早いことを知ります。

親しくなるうちに、ほかの人ではだめだった、
芸をさせることにも成功します。
芸の練習を続け、人前で発表することになります。

けれどシャチの機嫌が悪く、芸をしません。失敗します。
主役はやさぐれます。
儲けにならないと思った水族館の館長は、
シャチを殺すことにします。
シャチが死ぬと保険により保険金が入るのです。

それに気づいた主役は、水族館の人とシャチを連れ出します。
途中水族館の館長や、親にも気づかれます。
親には協力をあおぎます。
車を止められそうになりますが強引に突破し、
シャチを海に運び逃がそうとします。

館長は船を用意していて、シャチはつかまりそうになります。
主役はシャチを呼び、防波堤をジャンプで超えるように
命令します。
シャチはジャンプで超えて、海に帰っていきました。
主役と里親とのわだかまりも解けました。


……というようなお話です。

何かの事象を描いた映画というよりは、
心象風景を具体化したようなお話です。

シャチは家族がなく、一人で、
世界に不自由に閉じ込められている少年自身の象徴でしょう。
シャチの名前、フリーウィリーも、英語で『自由意志』の
もじりになっているところからもそう感じます。

少年が、シャチであるところの自分の心とふれあい、
殻を破って外に飛び出すだけの映画です。
簡単に言えば、青春モノになるでしょうか。

少年を成長させようとする描き方が性急で薄く、
個々のシーンとしては安い感じが目立ちました。

そもそも、誰でも簡単に進入できる水族館というのが微妙です。
侵入者にシャチを殺されてもよかったので
そうしていたとも考えられますが、
それよりも施設が破壊されたりするリスクを考えるなら、
それは得策とは思えません。

その建物に侵入してつかまり、落描きを消す羽目になったら、
妙に主役を理解する大人と知り合うのはまあいいとしても、
主役が芸を仕込んだのち、
主役が人前でショーを見せることになるというのも微妙です。

施設にはシャチは一匹だけで、
その一匹は主役しか芸をさせることができません。
そのショーで大金を稼ぐとしたら、主役は一週間のいつ、
何日をショーに立つのでしょうか?
こどもがそうした労働行為を行うのは、
法律で認められているのでしょうか?

そのショーが失敗すると、館長はシャチを殺そうとします。
動物は常に同じ気持ちではいません。
環境が変われば行動もかわります。
今まで静かなところにしかいなかったシャチが、
急ににぎやかで人がいる場所に出されれば、
静かなときと同じことができないのは、
犬や猫、馬を見たって明らかでしょう。
環境を変えるのであれば、
すこしずつ慣らしていく必要があります。

けれど、飼育のプロたちがそろっているのに
そんなことは何もせず、いきなり大勢の人の前に出します。
失敗してもそれを館長に説明すらしません。

館長は館長で、長い訓練のあとの一度の失敗で
シャチを始末しようとします。
何回か人前で行う練習をしていけばきちんと芸もして、
テレビでとりあげられる可能性があるのに、です。

シャチが殺されそうになって、
主役が助けようとするのはわかります。
けれど、海に入ってからは、逃がすために
防波堤を飛び越えさせようとするのはわけがわかりません。
防波堤は波を止めるために、海面に突き出しています。
一方、館長が用意した船の網は、ほぼ海面すれすれです。

失敗して落ちれば死ぬような防波堤を飛び越えさせるより、
自分を運ばせて、網に近づけて網の上を飛ばせたほうが
よっぽど安全で確実でした。

そこらへんは、急ごしらえの弱い網ではなく、
がっちりとした囲いを飛び越える、という象徴に意味があるので
それをしなければいけないのはわかりましたが、
映像とその背景として考えると、無理があると思いました。

基本的には出てくる人々が薄っぺらく、
何の考えも持っていないのが気になってしかたありませんでした。
主役から見た世界や大人たちは
そういう薄っぺらさなのだと考えられなくもありませんが、
そう思ったところで見ていてまったくおもしろくありません。

全体としては微妙な映画でした。